出生 ルーマニア・ブカレスト
生誕 1903年
身分 未亡人
自由奔放な恋愛、そして未亡人へ
裕福な家庭に生まれたベラは美しく、身体の方も十分な魅力をもって育ちました。
早熟なベラは十二、三歳のころにはもう作った恋人と家を出て一緒に暮らし、飽きると家に帰るということを繰り返していました。
しかし年上の実業家はやっと彼女のお眼鏡にかなったようで、ようやく結婚と相成りました。息子もひとり生まれ、これからは家庭に落ち着いていい母に・・・という矢先、夫の姿が見えなくなりました。
心配した近所の人がベラに事情を聞くと、夫は愛人をつくり外国へ行ってしまったといいます。しばらくすると、外国から夫の死亡通知が届いたと近所の人に話すようになりました。
繰り返される男の出入り
結婚相手がいなくなると元来派手で遊び好きなベラ、今度は劇場やカフェに通うようになります。そしてそこで出会った青年と再婚。
しかしその青年も4ヶ月もすると姿が見えなくなっていました。今度は相手が駆け落ちをしてしまったといいます。その青年は若くてハンサム、そして浮気癖もあったため、近所の人も傷心のベラに同情します。
そして次の3人目は結婚はしないものの同棲という形で一緒に暮らします。
ですが、この男もまたいなくなります。
そして次、次、と男が来てはいなくなり来てはいなくなりということを繰り返します。
ですがベラの連れてくる男は外国人や街の外の男ばかりで、近所の人もそこまで気に留めることはありませんでした。
次第に近所の人もベラの男遊びに慣れてしまい、不思議に思うこともなくなっていきました。
ついに陽の目にさらされる棺たち
急展開を迎えるのは32人目の男(死んだ2人の夫を入れると34人目)の時でした。
ベラは人選を間違えたのか、その相手は街の名士でした。そして妻も子供もいるという相手。その男がある日を境に行方が知れなくなります。しかし今回はこれまでのようにいなくなっても誰も気にしないという相手ではありません。その失踪に気付いた家族は当然、即座に警察に捜索届を出しました。
もちろん少し聞き込みをすれば、ベラがどういう人物かすぐに知れます。
多数の警察官が容疑者宅となったベラの家に押しかけると、その家には地下室がありました。警察官が地下室に踏み込むとそこには、なんと35個の棺が並べられていました。そしてその棺にはひとつひとつ、死んだ男の名前と年齢が書かれています。防腐剤や乾燥剤も一緒に入れられていましたが、それでも初期のものはミイラ化していました。
2人の夫と32人の恋人、そして棺の残りのひとつは最初の夫との間に生まれた息子のものでした。
警察に取り調べたベラは「あの人達が私を抱いた腕で他の女を抱くかもしれないと思うと、たまらなかった」と自供します。息子に関しても「年頃になったら私より大切な女を作って離れていくと思うと許せなかった」と悪びれずに答えます。
そして取り調べ中のの担当を戦慄させた事実。
それは、ベラは毎晩地下室に降りてはひとつひとつ棺を開け、その棺の中身を蝋燭で照らしながら眺めて楽しんでいたということでした。
35人を殺したベラは当然、終身刑へと処されました。
ベラは女性では珍しいネクロフィリアといえるでしょう。
女性の殺人動機として嫉妬は珍しい理由ではありませんが、計35人という数字は現代であっても衝撃的です。
参考文献
岳真也/『悪女たちの残酷史』/講談社
世界の悪女研究会/『惨くて美しい世界の悪女・妖女事典』/永岡書店